第3回:社員は本当に「突然」辞めるのか?

「まさか、あの人が辞めるとは思わなかった」

社員から突然退職の申し出を受けたとき、経営者や管理職の方から、このような言葉を聞くことがあります。

特に、真面目で仕事もきちんとこなし、周囲との大きなトラブルもなかった社員であれば、なおさらです。

しかし、本当にその退職は「突然」だったのでしょうか。

「突然」に見えるのは、退職を知った側から見たとき

退職届が提出された日は、会社にとっては明確な出来事です。

しかし、本人の中では、その何か月も前から、

「このままでいいのだろうか」

「疲れてきた・・・もう無理だ」

「上司に話しても仕方がない」

「やはり、この会社では難しいかもしれない」

といった小さな変化が積み重なっていたかもしれません。

つまり、退職という出来事は突然でも、退職に至るプロセスまで突然だったとは限らないのです。

小さな変化は、数字になる前に現れる

組織の問題を考えるとき、離職率や休職率、エンゲージメントスコアなどの数字は重要です。

しかし、数字として表れる前に、現場ではさまざまな変化が起きています。

以前より発言が少なくなった。

会議で意見を言わなくなった。

上司への相談が減った。

必要最低限の仕事しかしなくなった。

以前なら提案していた人が、何も言わなくなった。

こうした変化の一つひとつだけを見れば、大きな問題には見えないかもしれません。

しかし、その人を継続して見ていれば、

「以前と何かが違う」

という変化に気づくことがあります。

大切なのは、その変化をすぐに「やる気がない」「最近の若手は」「本人の問題だ」と評価してしまわないことです。

「なぜ、この変化が起きているのだろう」

と、一度立ち止まって考える必要があります。

「問題のある社員」を探す前に、関係性を見る

社員の行動は、その人自身の性格や能力だけで決まるものではありません。

上司との関係、仕事量、役割の曖昧さ、評価制度、職場の人間関係、将来への見通しなど、さまざまな要因との関係の中で生まれています。

例えば、以前は積極的に提案していた社員が、ある時期から何も言わなくなったとします。

本人のプライベートの悩みゆえに、意欲が低下した可能性もあります。

一方で、

「何を言っても聞いてもらえない」

「提案すると仕事だけ増える」

「失敗したときだけ責任を問われる」

といった経験を重ねた結果、「言わない」という行動を選ぶようになった可能性もあります。

同じ行動でも、その背景によって意味はまったく異なります。

退職者を引き留めることだけが離職対策ではない

特に優秀な社員が退職の意思を固めたとき、面談や待遇改善によって引き留めようとすることがあります。

もちろん、それが有効な場合もあります。

しかし、離職対策でより重要なのは、退職届が出る前の組織を見ることではないでしょうか。

なぜその人は会社を離れようと思ったのか。

それは一人だけに起きていることなのか。

同じことを感じている社員はいないか。

管理職は変化に気づけなかったのか。

社員が困ったときに声を上げられる環境だったか。

一人の退職を「その人の事情」で終わらせず、組織を理解するための情報として捉える。

そこから、次の離職を防ぐヒントが見えてくることがあります。

数字の手前で起きていることを見る

離職率が上昇してから対策を始めることもできます。

しかし、その数字が動く前から、組織の中では何かが起きています。

小さな変化を捉え、その意味を考え、必要であれば管理職自身の関わり方や組織の仕組みを修正する。

当社では、こうした「数字になる前の変化」を丁寧に見ながら、経営・人事・現場それぞれの視点をつなぎ、組織の課題を考えていきます。

「突然の退職」が続いているとしたら。

考えるべきなのは、辞めた社員だけではなく、

その人が辞めるまで、組織の中で何が起きていたのか

なのかもしれません。

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