第11回:AIで仕事が20%速くなった。では、仕事を20%増やしますか?

AIの導入によって、これまで8時間かかっていた仕事が約6時間半で終わるようになった。

もし、そんなことが起きたらどうするでしょうか。

「1時間半空いた。それなら、その時間に別の仕事を入れられる」

そう考えるのは、一見すると合理的です。

企業がAIを導入する目的の一つは、生産性を高めることです。限られた人員や時間で、より大きな成果を生み出せるようになれば、企業にとって大きなメリットになります。

しかし、ここで一つ考えてみたいことがあります。

効率化によって生まれた時間は、すべて新しい仕事で埋めるべきなのでしょうか。

仕事が速くなった。その次に何をするか

たとえば、ある部署の業務がAIによって約20%効率化されたとします。

すると、

AIを導入する

業務時間が短縮される

時間に余裕が生まれる

新しい業務を追加する

再び余裕がなくなる

ということが起こり得ます。

もちろん、新しい仕事を追加すること自体が問題なのではありません。

AIによって生まれた時間を、新しい事業や顧客対応、企画、教育などに振り向けることは、企業の成長につながるでしょう。

問題は、「時間が空いたのだから、そこを仕事で埋めるのが当然」と考えてしまうことです。

「余っている時間」は、本当にムダなのか

組織では、いつも予定どおりに物事が進むとは限りません。

社員が突然休むこともあります。

急ぎの顧客対応が入ることもあります。

システムのトラブルが起きることもあれば、予想していなかった問題への対応が必要になることもあります。

さらに、人は一日中、同じ速度と精度で働き続けられるわけでもありません。

それでも、平常時の業務だけを基準にして、人員や時間を限界まで使うように設計していたらどうなるでしょうか。

何か一つ予定外のことが起きただけで、その負担を誰かが引き受けなければならなくなります。

せっかくAIによって生まれた余力をすべて使い切ってしまえば、再び人が無理をして変動を吸収する組織に戻ってしまうかもしれません。

AIが生み出した時間を、どう使うか

AIによる生産性向上を考えるとき、私たちはつい、

「同じ時間で、どれだけ多くの仕事ができるようになったか」

に注目します。

しかし、別の見方もできます。

AIによって生まれた時間を、

新しい仕事に使うのか。

社員の教育に使うのか。

これまで後回しにしていた改善活動に使うのか。

顧客との対話に使うのか。

考える時間に使うのか。

あるいは、予期しない出来事に対応するための余力として、あえて残すのか。

そこには、さまざまな選択肢があります。

つまり、AIが生み出した余力をどう使うかは、単なる業務効率化の問題ではありません。

それ自体が、経営判断なのです。

「生産性向上」のその先を考える

AIによって8時間かかっていた仕事が、約6時間半になった。

これは、大きな成果です。

しかし、本当に考えるべきなのは、その次なのかもしれません。

空いた1時間半を、すぐに新しい仕事で埋めるのか。

事業の拡大や成長のための仕事に振り向けるのか。

社員や組織の能力を高めるために使うのか。

それとも、変化や予期しない出来事に対応できる余力として、一部を残すのか。

答えは、会社や仕事の性質によって異なるでしょう。

だからこそ必要なのは、

「効率化できた。では、もっと仕事を増やそう」

で思考を止めないことです。

AIによって生まれた余力を、組織としてどこに配分するのか。

そこまで考えて初めて、AIによる生産性向上を経営に生かしたことになるのではないでしょうか。

そして、ここでもう一つの問いが生まれます。

そもそも、組織に「余力」を持たせることは、本当にムダなのでしょうか。

次回は、この「余力」について、もう少し考えてみたいと思います。

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