第6回:「仕事ができる人」を管理職にすれば、うまくいくのか?

営業成績が高い。

専門知識や技術力がある。

仕事が速く、判断力もある。

責任感が強く、上司からの信頼も厚い。

こうした社員を見て、

「次の管理職は、この人だ」

と考えることがあります。

実際、これまで高い成果を上げてきた社員を管理職に登用することは、決して不自然なことではありません。

しかし、一つ考えてみたいことがあります。

「自分で仕事をして成果を出す力」と、「人を通じて成果を出す力」は、同じなのでしょうか。

「自分ができる」からこそ、難しくなることもある

「仕事のできる人」によくあるのが他者を見て、

「なぜ、これが(難しいことでないのに)できないのだろう」

「自分なら、もっと短時間でできる」

「説明したのだから、もう分かるはず、できるはずだ」

と感じることがあります。

本人に悪意があるわけではありません。

むしろ、自分自身がこれまで努力し、高い基準で仕事をしてきたからこそ、その基準が「普通」になっていることがあります。

しかし、部下や後輩の経験、知識、得意・不得意、仕事の進め方は一人ひとり異なります。

自分には一度の説明で理解できたことでも、別の人にはもう少し説明が必要かもしれません。

自分にとって簡単な仕事が、部下・後輩にとっても簡単とは限りません。

反対に、自分にはない「強み」を持っている部下・後輩もいるでしょう。

「自分ができること」と「他者ができるように支援すること」は、別の仕事なのです。

管理職になると、仕事そのものが変わる

プレイヤーとして働いていたときは、自分自身の成果が評価の中心だったかもしれません。

しかし、管理職になると役割が変わります。

部下に仕事を任せる。

進捗を確認する。

必要なフィードバックをする。

部下の小さな変化に気づく。

チーム内の関係を調整する。

上位方針を現場に伝える。

現場で起きていることを経営陣や人事へ伝える。

そして、チームとして求められる成果を出す。

つまり、管理職への昇進は、単に責任や権限が増えるだけではありません。

求められる仕事そのものが変わるのです。

「優秀な人を管理職にしたのに、うまくいかない」

管理職になった途端、

部下との関係がうまくいかない。

仕事を任せられず、自分で抱え込む。

細かく指示しすぎる。

部下が育たない。

本人自身も疲弊していく。

そんなことが起きる場合があります。

すると会社側は、

「管理職としての適性がなかったのではないか」

と考えるかもしれません。

もちろん、管理職という役割への適性には個人差があります。

しかし、その前に考えてみたいことがあります。

その人は、管理職として仕事をするための準備の機会を与えられていたのでしょうか。

管理職としての仕事を、誰が教えたのか?

プレイヤー時代には、

「自分で考える」

「自分で解決する」

「自分で成果を出す」

ことで評価されてきた人が、

昇進した翌日から突然、

「部下に任せなさい」

「部下を育成しなさい」

「チームをまとめなさい」

「部下のメンタルヘルス、ハラスメントにも注意しなさい」

と求められることがあります。

しかし、

仕事の任せ方。

部下との面談の仕方。

フィードバックの方法。

部下の変化の見方。

問題が起きたときの人事や産業保健スタッフとの連携。

こうしたことを、会社はどのくらい具体的に教えているでしょうか。

管理職研修を一度受講しただけで、その後は本人任せになっているケースも多々あります。

新しい役割を任せるのであれば、その役割を果たすための学習と支援も必要なのです。

管理職本人も「組織の一員」である

第4回では、メンタル不調者が多い部署を見て、すぐに「管理職に問題がある」と考えることの危うさについてお話ししました。

管理職自身も、組織の環境から影響を受けています。

慢性的な人員不足。

達成困難な目標。

プレイヤー業務と管理業務の両立。

部下への対応。

上司からの要求。

他部署との調整。

そのすべてを抱えながら、

「管理職なのだから、自分で何とかしてください」

となっていないでしょうか。

部下を支える役割を担う管理職にも、支援が必要なことがあります。

「管理職の問題」で終わらせない

部下が育たない。

離職者が多い。

チームの雰囲気が悪い。

管理職自身が疲弊している。。。

こうした問題が起きたとき、

「あの管理職はマネジメント能力が低い」

と評価すれば、一つの説明はできます。

しかし、それだけでは十分ではないかもしれません。

なぜ、その人を管理職に選んだのか。

管理職に何を期待しているのか。

その役割や範囲は明確になっているか。

必要な知識やスキルを学ぶ機会はあるか。

困ったときに相談できる人はいるか。

管理職自身の業務量は適切か。

会社として、管理職を支える仕組みはあるか。

管理職個人を見ると同時に、「管理職が働いている環境」を見る。

ここでも、個人と組織の両方を見る視点が必要になります。

「仕事ができる人」と「人を任せられる人」

仕事ができることは、大きな強みです。

その経験や専門性が、管理職として生かされることも当然あります。

だから、「優秀なプレイヤーを管理職にしてはいけない」という話ではありません。

大切なのは、

「仕事ができる人」と「人を任せられる人」は、必ずしも同じではない

と理解しておくことです。

そして、管理職として必要な力がまだ十分でないのであれば、本人だけの問題として捉えるのではなく、学び、経験し、支援を受けながら身につけられる環境をつくること。

当社では、管理職個人の能力だけを見るのではなく、その人に何が求められているのか、どのような環境で働いているのか、組織からどのような支援を受けているのかまで含めて考えることを大切にしています。

「仕事ができるから、次は管理職」

その判断をする前に、一度考えてみてはいかがでしょうか。

「この人は管理職に向いているか」だけではなく、「この人が管理職として力を発揮できる環境を、会社は用意できているか」と。

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