「Aさん、最近、落ち込んでいるようで口数が減った気がする」
「Bさん、以前よりミスが増えたなぁ」
「Cさん、会議で、あまり発言しなくなった」
毎日一緒に働いているからこそ気づく、部下の小さな変化があります。
第3回では、こうした変化を「数字になる前の変化」としてお話ししました。
そして第6回では、部下の小さな変化に気づくことも、「管理職に求められる仕事の一つ」として挙げました。
では、実際に、
「最近、何か違うな。。。」
と感じたとき、管理職は具体的に何を見ればよいのでしょうか。
「見えたこと」と「自分の解釈」は同じではない
例えば、以前は会議でよく発言していた社員が、最近ほとんど発言しなくなったとします。
「会議での発言が減った」
これは、**「観察できる変化」**です。
しかし、
「仕事への意欲が低下したに違いない」
となると、これは**その変化に対する「解釈」**です。
実際には、職場で・・・
何度提案しても、まともに取り合ってもらえなかった。
発言した際に、上司から強く否定された。
業務量が増え、睡眠不足や考える余裕がなくなっている。
プライベートで何かを抱えている。
あるいは単に、「この会議では自分が発言する必要はない」と考えるようになっただけかもしれません。
同じ「発言が減った」という行動でも、その背景はさまざまです。
見えた事実と、自分がそこから意味づけしたことを、いったん分けて考える。
これは、部下の変化を見るときに大切なことです。
「メンタル不調」と決めつけない
遅刻が増えた。
ミスが増えた。
表情が暗い。
口数が減った。
こうした変化は、心身の不調のサインである可能性もあります。
だから、変化に気づくことは重要です。
しかし、
「最近元気がない」
というだけで、
「メンタル不調なのではないか」
と決めつけることも適切ではありません。
反対に、
「やる気がない」
「仕事への責任感が足りない」
と本人の姿勢の問題にしてしまうことも同じです。
変化は、あくまでも**「何かが以前と違う」ことを知らせる情報**です。
その時点では、まだ原因までは分かりません。
大切なのは「その人の普段」と比べること
人には、それぞれ違いがあります。
よく話す人もいれば、もともと口数の少ない人もいます。
表情豊かな人もいれば、感情をあまり表に出さない人もいます。
仕事が速い人もいれば、時間をかけて慎重に進める人もいます。
だから、
「発言が少ないから問題」
「一人で昼食を食べているから心配」
と、一つの基準で全員を見ることはできません。
見るべきなのは、
「一般的な社員と比べてどうか」ではなく、「その人の普段と比べてどうか」
です。
普段よく発言する人が急に黙る。
時間に正確だった人の遅刻が続く。
丁寧に仕事をしていた人のミスが増える。
そこで初めて、
「何か変わったのではないか」
という情報になります。
変化に気づいたら、すぐに「全て解決」しなくてもいい
部下の変化に気づくと、
「管理職なのだから何とかしなければ」
と思うかもしれません。
しかし、管理職がその場ですべての原因を特定し、問題を解決する必要はありません。
まずできることは、
「最近、少し忙しそうに見えるけれど、大丈夫?」
「この頃、会議であまり発言していないようだけど、何か気になっていることはある?」
など、自分が気づいた具体的な変化をもとに、本人に確認してみることです。
ここでも、
「最近やる気がないようだけど」
と自分の解釈を伝えるのと、
「以前より会議での発言が減ったように見えるけれど」
と観察した事実を伝えるのでは、受け取られ方が違います。
「本人に何が起きているか」だけを見るのではない
そして、もう一つ大切な視点があります。
部下の変化に気づいたとき、
「この人に何が起きているのだろう」
と考えるだけでなく、
「自分の関わり方が、この変化に影響していないだろうか」
と考えてみることです。
最近、仕事を任せすぎていなかったか。
反対に、細かく指示しすぎていなかったか。
話しかけられたとき、顔も見ずに、「今忙しいから後にして」と何度も返していなかったか。
本人の提案を、十分に聞かずに否定していなかったか。
成果を求めるあまり、本人の状況を確認していなかったのではないか。
もちろん、部下に起きている変化のすべてが上司の関わりによるものではありません。
しかし、自分自身もその人を取り巻く「環境」の一部です。
だからこそ、自分の関わりも一度振り返ってみる価値があります。
観察して、意味を考え、必要なら関わり方を変える
部下の変化に気づく。
何が起きているのか考える。
本人の話を聞く。
自分自身の関わりも振り返る。
そして必要であれば、仕事の任せ方やコミュニケーションの取り方を変えてみる。
場合によっては、人事や産業保健スタッフなど、適切な専門家につなぐ。
管理職に求められるのは、部下の問題をすべてを一人で解決することではありません。
観察し、意味を考え、自分の関わりも振り返り、必要に応じて対応を修正すること。
当社では、こうした一連のプロセスを大切にしています。
「最近、何か違う」
その小さな違和感は、まだ数字にも問題にもなっていないかもしれません。
しかし、その段階だからこそ、できることがあります。
まずは、
「何が変わったのだろう」と、その人を丁寧に見ること。
そこから始めてみてはいかがでしょうか。