「いい人材が採れない」の前に、決めるべきこと(第24回)

「なかなか、いい人材が採れないんです。」

採用について話していると、よく耳にする言葉です。
ただ、その「いい人材」とは、どのような人でしょうか。

経験が豊富で、専門性があり、周囲とうまく協力できる。
自分で考えて動き、必要なら何でも引き受けてくれる。

どれも望ましい条件に見えます。
しかし、それを並べるだけでは、その会社で何を担う人が必要なのかは、まだ分かりません。

「いい人材が欲しい」という期待を、「この仕事を、この条件で任せたい」という言葉に変える必要があります。

たとえば、「人事に強い人を採りたい」と考えている会社があるとします。

採用担当者は、「採用活動を任せられる人」を探している。
現場の管理職は、「社員の労務相談にすぐ対応できる人」を期待している。
経営者は、「人事評価制度そのものを立て直してほしい」と思っている。

それぞれが思い描く「いい人材」は、同じでしょうか。

このまま面接を重ねても、候補者の評価が分かれるのは不思議ではありません。
入社後も、本人が聞いていた仕事と、周囲から求められる仕事が異なってしまうおそれがあります。

まず決めたいのは、採用によって解決したい課題です。

応募者を増やしたいのか。
労務対応の遅れを減らしたいのか。
評価制度の見直しを進めたいのか。

そのうえで、最初の半年に何を任せ、どの状態を目指すのかを具体的にする。
複数の課題があるなら、優先順位と、ほかの人が担う範囲も決める必要があります。

米国人事管理庁(OPM)も、採用・選考の基礎として、仕事の内容、必要な能力、両者のつながりを把握する「職務分析」を挙げています。
「採りたい人物像」を考える前に、「任せる仕事」を理解することが出発点になります。

次に、その仕事に必要な能力を整理します。

入社時点で必ず必要なものは何か。
入社後に、時間や支援があれば身につけられるものは何か。

「コミュニケーション力が高い」という条件も、そのままでは曖昧です。
たとえば、現場の意見を聞き、対立する要望を整理・調整し、判断が必要な点を上司や経営者に明瞭に説明できること。
そこまで具体化すれば、面接で尋ねる内容や、経験を確認する観点も定まりやすくなります。

一方で、責任だけを明確にしても、仕事は進みません。

制度を変えてほしいと言いながら、必要な情報を開示しない。
現場を動かしてほしいと言いながら、部署間の調整はすべて本人任せ。
判断を求めても、誰も決めない。

これでは、能力のある人を採用しても、その力を十分に活かせません。

どこまで本人が決めてよいのか。
誰に相談し、誰が最終判断をするのか。
必要な予算や情報、協力体制をどう確保するのか。

任せる仕事と、それを進めるための裁量や支援は、併せて考える必要があります。

受け入れ体制も同じです。

入社した人に、会社固有の事情を誰が伝えるのか。
関係部署とのつながりを誰がつくるのか。
困ったとき、誰が一緒に優先順位を整理するのか。

経験も実力もある人であっても、その会社の経緯や暗黙のルールまで、初日から知っているわけではありません。
「即戦力だから説明はいらない」と考えてしまえば、力を発揮するまでの道のりが、かえって遠のいてしまいます。

もちろん、条件を明確にすれば、必ず採用できるわけではありません。
仕事内容に見合う報酬や働き方、応募者にとっての魅力も問われます。
期待する役割が大きすぎるなら、一人に集めた仕事を分けることや、外部の専門家を活用することも検討の対象です。

「いい人材がいない」で振り返りを終える前に、会社として何を任せ、何を用意するのかを明確にする。

採用条件は、応募者に求めるものだけではありません。任せる仕事、必要な能力、裁量、受け入れ体制まで明確にして初めて、会社と応募者の双方が、納得して判断できる採用になるのではないでしょうか。


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参考資料
U.S. Office of Personnel Management. Job Analysis.
https://www.opm.gov/policy-data-oversight/assessment-and-selection/job-analysis/

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