「厳しく指導する」と「威圧する」は、何が違うのか?(第19回)

「注意すると、パワハラと言われそうで……。」

そう考えて、必要な指導までためらってしまう管理職もいるかもしれません。
ハラスメントへの関心が高まる中で、どのように注意や指導をすればよいのか、迷う場面もあると思います。

一方で、「仕事なのだから、プロなのだから、厳しく言うのは当然だ」と考える人もいるでしょう。

仕事の質や安全を守るために、改善を求めなければならない場面はあります。
では、その指導は、相手に何を伝えているでしょうか。

指導の厳しさを、声の大きさや、叱る時間の長さで測っていないでしょうか。

たとえば、提出された報告書に、必要な数値が入っていなかったとします。

「何度言えば分かるんだ。」
「そんなこともできないのか。」

こう言われても、相手には、次に何を直せばよいのかが十分に伝わりません。
過去の失敗まで持ち出されれば、目の前の仕事の改善から話が離れてしまうこともあります。

同じ場面でも、伝え方を変えることはできます。

「今回の報告書には、判断に必要な実績の数値がありません。数値とその根拠を追記し、明日午前中に再提出してください。必要なデータは確認できていますか。」

何が不足しているのか。
なぜ修正が必要なのか。
何を、いつまでにしてほしいのか。

そこを具体的に伝えれば、相手と改善の方向を共有できます。
資料や知識が足りないのであれば、その障害も確認できます。

大切なのは、確認できた事実に基づいて、改善を求める点を具体的に、簡潔に伝えることです。
説明を聞き、理解を確かめる時間は必要ですが、同じ非難を長く繰り返す必要はありません。

厚生労働省も、客観的にみて、業務上必要かつ相当な範囲で行われる適正な業務指示や指導は、パワーハラスメントには該当しないと説明しています。ただし、必要な指導であっても、目的だけでなく、言い方や頻度、行われた状況などを含めて考える必要があります。

「指導のつもりだった」という意図だけで、その方法まで適切だったとは言い切れません。

本人の行動に改善を求めることと、人格や存在そのものを否定することは異なります。
「この仕事の、ここを直してほしい」という話を、「あなたは駄目な人間だ、無能だ」という評価に広げないことです。

また、指導を受けた社員が黙ったからといって、理解し、納得したとは限りません。
怖くて質問できないまま、同じところでつまずくことも考えられます。

「次は、どのように進めますか。」
「実行するうえで、難しい点はありますか。」

そう確かめることで、伝えた内容が実際の行動につながるかを確認できます。

もちろん、同じ問題が繰り返される場合には、改めて対応が必要です。
その際にも、指示は明確だったか、実行に必要な条件は整っていたか、本人は何を理解し、どう行動したかを確認する。
感情の強さを増す前に、対応を見直す余地があります。

危険な行動を止めるため、その場で強く制止する必要がある場合もあるでしょう。
その後には、何が危険だったのか、次にどう行動すべきかを説明することが重要です。

管理職自身が、「一人前」になるまでに強い叱責を受けながら仕事を覚えてきた場合、ほかの指導方法を学ぶ機会がなかったのかもしれません。
会社には、管理職に「適切に指導しなさい」と求めるだけでなく、具体的な伝え方を学び、練習する機会を用意することも求められます。

厳しい基準を持つことと、相手を萎縮させることは、分けて考えられます。

指導の目的は、「相手を言い負かすことではなく、必要な改善を実現すること」です。何を変えてほしいのかが伝わり、行動変容を促す指導が大切です。

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参考資料
厚生労働省「あかるい職場応援団:パワーハラスメントとは」
https://www.no-harassment.mhlw.go.jp/foundation/harassment_list/power-hara/

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