リーダーの真価は、「異論」を受けたときに表れる(第17回)

「何か意見があれば、遠慮なく言ってほしい。」

そう伝えている経営者や管理職はいるでしょう。
では、実際に自分の判断と異なる意見が出たとき、どのように応じているでしょうか。

「その進め方では、現場に無理が出ます。」
「今回の判断には、見落としている点があると思います。」

賛成の言葉を聞くときと、不都合な指摘を受けるときでは、気持ちの動きも違うはずです。

特に、自分が時間をかけて考え、責任を持って決めたことへの異論は、すぐには受け入れにくいかもしれません。
しかし、その瞬間にどう応じるかは、リーダー自身が意識したい点です。

異論を求める姿勢は、言葉だけでなく、異論を受けた後の対応に表れます。

たとえば、会議で社員が納期への懸念を伝えたとします。

その内容を確かめる前に、「できない理由を探すな」「君はいつも後ろ向きだ」と返されたらどうでしょうか。

指摘した社員には、納期を守るために、早めに問題を共有する意図があったかもしれません。
それでも、仕事への姿勢や人柄の問題として扱われれば、次に同じことを伝えるのをためらう可能性があります。

そのやり取りを見ていた周囲も、「ここでは、懸念を伝えると否定的に見られる」と受け止めるかもしれません。

こうして意見が減ったとき、会議はまるで「円滑」になったかのように見えます。
しかし、判断に必要な情報まで減っていないかは、別に確かめる必要があります。

リーダーの姿勢と社員の発言の関係は、組織研究でも検討されてきた論点です。意見を求める仕組みと併せて、受け取る側の行動にも目を向ける必要があります。

もちろん、異論を聞くことと、その意見に従うことは異なります。

すべての提案を採用することはできません。
経営には、現場からは見えない制約があり、経営者として別の判断をすることもあるでしょう。

ただし、提案を採用しない場合にも、何を確認し、どのような理由で判断したのかを説明することはできます。

「どの工程に無理が出ると考えていますか。」
「今の体制では難しいということですね。対応できる条件を整理しましょう。」

まず、指摘の内容を具体的に確かめる。
そのうえで、判断の根拠を伝える。
自分の見落としが分かったなら、決定を修正する。

それは、判断する責任を手放すことではありません。
判断の質を高めるために、必要な情報を受け取る行動です。

社内の意見だけでは、自分たちの前提に気づけない場合もあります。
だからこそ、第三者からの指摘を受ける機会にも意味があります。

ただ、外部の専門家に意見を求めても、「耳の痛い指摘」を退けてしまえば、改善につなげることはできません。
自分にとって不都合な指摘であっても、その内容を確かめ、制度や運用を変える必要があるのかを検討する。その姿勢が問われます。

リーダーの謙虚さは、単に物腰が柔らかいことではないと思います。
自分の理解にも限界があり、判断にも修正の余地があると認め、それを行動に移せることです。

次に異論を受けたとき、すぐに結論を返す前に、その人が何を見て、何を心配しているのかを尋ねてみる。
そこから、自分には見えていなかった問題が分かるかもしれません。

異論を受け止め、必要なら自分の判断も修正する。その姿勢が、組織に必要な声を残していくのだと考えます。

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参考文献
Detert, J. R., & Burris, E. R. (2007). Leadership behavior and employee voice: Is the door really open? Academy of Management Journal, 50(4), 869–884.
https://doi.org/10.5465/amj.2007.26279183

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